旧藤堂家染井屋敷石造物

 

境内にある石造物のいくつかは、現在の豊島区駒込付近に所在していた 津藩藤堂家・江戸下屋敷(染井屋敷)に置かれていました。 これらは、文政元年(1818)に作成された「藤堂和泉守殿染井屋敷図」に、 呼称や特徴などが付されて描かれ、天保13年(1842)成立の『虎丘堂集書』に、 「不思議な形」「形異状」な珍品であると記録されるなど、当時から特色ある 石造物として知られていました。

また明治年間に発刊された『江戸会誌』収録の「染井藤堂家の石像」と題する レポートには、邸内に残存していた古石像11体が、一所に集められていたことが 記録されています。 その後、同地は「仙人塚」や「鉄拐堂」と呼称され、とくに足の病気平癒を 願う 人々の信仰対象となりました。

戦後、これらは「鉄拐堂」に隣接する個人宅に置かれていましたが、 昭和42年に、当時板橋区仲宿に所在していた乗蓮寺に移されました。 そして、昭和46年からの当寺の赤塚移転に伴い、現在の場所に移設されました。

なお、現在当寺に現存している旧藤堂家染井屋敷石造物は

「鉄拐仙人」
「奪衣婆(婆々)」
「天邪鬼(がまんの鬼)」
「恵比寿」・「大黒」
「文殊菩薩」・「布袋尊」
「役行者(小角)」

の石像、 計8点です。

これらの石造物は、江戸期に大名屋敷内に所在していたことを文献資料から裏付けることができる希有な資料であることから、 平成23年に板橋区の 登録有形文化財となりました。